ノルウェーの西海岸の小さな港町Bodø(ボードー)から約33km
車窓から見える景色に自然が増え海を右手に景色を楽しんでいると、目の前に聳え立つような近代的でスマートな橋が見えてくる
橋の側には観光客や釣りをしに来た人々がパラパラと集まってくる
ここはボードーでも人気の観光スポットSaltstraumen(サルトストラウメン)、世界最強の渦潮が見られる場所だ

母なる大地に畏怖 “Saltstraumen(サルトストラウメン)”

ノルウェー海につながるSaltenfjorden(サルテンフィヨルド)とSkjerstadfjorden(シャーシタフィヨルド)を繋ぐ狭い海、Saltstraumen(サルトストラウメン)

周囲に広がる美しい自然と響く轟音、目の回るような波の速さと渦を巻き始める海、サルトストラウメンはノルウェーの海の脅威を感じることのできる場所だ

サルトストラウメン海峡、渦潮のできる場所

内海であるSkjerstadfjorden(シャーシタフィヨルド)と外海であるノルウェー海(Saltenfjorden(サルテンフィヨルド)からつながる)の高低差が大きくなり、6時間毎(満潮・干潮の際と思われる)に4億㎥もの水が勢いよく移動することによるとてつもない水力で渦潮が起こるとされている

その速さは実に20kt(ノット)、およそ時速37kmの速度でその幅たった150mという狭い海を海水が流れる

幅150mの限られた海を大量の海水が流れることで、海峡の真ん中辺りの海が盛り上がって見える

世界一のうず潮、サルトストラウメン

世界一のうず潮と聞いて「おや?」と思った方もいるかもしれない

なぜなら、世界一のうず潮は我らが日本に存在するからだ

鳴門海峡の大うず潮といえば、日本人なら誰でもその存在を知っている世界一大きなうず潮だ

では、サルトストラウメンの世界一とはどういうことなのか
謎を紐解いていこう

ひしめく渦潮、世界三大潮流

そもそも、世界三大潮流と言われてすぐに名前を挙げられる人がどれほどいるだろうか
筆者は、うず潮について調べる上で、初めてその存在を知った

・イタリアの『メッシーナ海峡』
・カナダの『セイモア海峡』
・日本の『鳴門海峡』

上記三箇所が世界三大潮流として日本で知られているようだ

ここにもサルトストラウメンは入っていない
やはりサルトストラウメンは世界一ではないのだろうか

世界最速にてして最強のうず潮

英語版のWikipediaにその答えがあった

サルトストラウメンは有名なうず潮の一つとして一番最初に挙げられており、以下のように記されている

It has one of the strongest tidal currents in the world.

https://en.wikipedia.org/wiki/Whirlpool

『世界で最も”強い”潮流』と記されている

鳴門海峡の渦潮は、世界で最も大きい渦潮として知られているが、サルトストラウメンは、世界で最も早い渦潮として知られているのだ

鳴門海峡のうず潮はその他!?

余談ではあるが、英語版のWikipediaでは鳴門の大うず潮は残念ながら、その他の欄に他のうず潮とともに記載されている

うず潮の強さに言及しているので、若干偏った内容といえなくもないが、日本に元々興味のある人々に限らず、英語を読める多くの人にもっと鳴門海峡の渦潮についても知ってもらいたいものだ

自然の神秘、世界に渦巻く渦潮の謎

サルトストラウメンのことを知れば知るほど、渦潮のことがもっと知りたくなってくる

記事作成の過程で世界の渦潮ランキングを調べてみたのだが、何故かネットで調べても正確な情報がなかなか出てこない

そこには、渦潮が自然現象であるが故の理由があるようだ

世界最大、鳴門海峡の渦潮

サルトストラウメンについて調べる上で、切っても切り離せなかったのが、鳴門海峡の大渦潮だ

ネットで『ノルウェー 渦潮』で検索しても、大抵の記事は鳴門の渦潮について書かれている

鳴門海峡の渦潮をメインに、若干サルトストラウメンに触れるという流れが多い

記事を読んでいてわかったことは鳴門海峡の渦潮は世界遺産登録へ向けて精力的に活動しているということだ

鳴門海峡の渦潮を世界遺産へ
うず潮を世界遺産にする淡路島民の会

鳴門海峡の渦潮、世界遺産登録への取り組み

鳴門海峡の渦潮が世界遺産登録の活動をしていく上で必要になるのが、大きさ・速さ・深さといった科学的根拠に基づいた正確な数値だ

現在世界遺産登録に向けて、GPS付きの浮きを流し速さを計測したり、ドローンやヘリなどで空から大きさを計測したりしているようだ

筆者がサルトストラウメンを訪れた際も、小型のモーターボートで浮きを流して何かを計測しているようだった

おそらく、渦潮が自然のものである以上、季節や天候などによっても変化が起こると推測されるので、一定以上の期間をかけて慎重に調査を行う必要があるのだろう

サルトストラウメンと鳴門の大渦潮

鳴門海峡の渦潮を世界遺産登録するために活動する、『兵庫・徳島「鳴門の渦潮」世界遺産登録推進協議会』は、世界の各地の渦潮のある町と共同での世界遺産申請を行う予定のようだ

「鳴門の渦潮」世界遺産登録、カナダなどと共同申請へ(2020年の記事)

また、兵庫県南あわじ市はノルウェーのボードーと友好連携協定を結んでいる

「渦潮」つながりで友好協定 南あわじ市とノルウェー・ボーダ市(2020年の記事)

すでに各調査はノルウェーやスコットランドを中心に共同調査を進めている

【2022版】世界の渦潮、ランキング

前述の通り、まだまだ調査中の世界の渦潮達

情報が出揃っていない状況ではあるが、現在わかっている情報で世界の渦潮ランキングを作成してみた

最後の方にネット上で見つけられた数値も載せている

世界の渦潮、大きさランキング

1位 鳴門海峡(日本、鳴門海峡)
2位 Saltstraumen(ノルウェー、サルトストラウメン海峡)
3位 The Gulf of Corryvreckan(スコットランド、コリヴレカン海峡)

※2022年時点でインターネットで調べられる範囲の情報のみのため、調査が進めばイタリアのメッシーナ海峡やフランスのランス河口などがランクインしてくる可能性有り

世界の渦潮、速さランキング

1位 Saltstraumen(ノルウェー、サルトストラウメン海峡)
2位 Seymour Narrows(カナダ、セイモア海峡)
3位 鳴門海峡(日本、鳴門海峡)

※2022年時点でインターネットで調べられる範囲の情報のみのため、調査が進めばイタリアのメッシーナ海峡やフランスのランス河口などがランクインしてくる可能性有り

世界各国の渦潮達の情報

インターネットでの情報で、よく名前の挙がる以下の渦潮の情報を調べてみた

・Saltstraumen(ノルウェー、サルトストラウメン海峡)
・鳴門海峡(日本、鳴門海峡)
・Seymour Narrows(カナダ、セイモア海峡)
・The Gulf of Corryvreckan(スコットランド、コリヴレカン海峡)

日本のサイトでよく登場する、Stretto di Messina(イタリア、メッシーナ海峡)は情報がなかったので、今回は除外

Saltstraumen鳴門SeymourCorryvreckan
速さ20kt10kt15.5kt8.5kt
大きさ10m最大30m??9m
深さ4-5m100m100m(70m?)

参照サイト:
Saltstraumen
鳴門海峡
Seymour Narrows
The Gulf of Corryvreckan

危険?それとも黄金郷?サルトストラウメンの海

渦潮はとても危険な海流だ

今でこそ、エンジン付きのボートで近くまで寄ることができるが、多くの人が渦潮によって亡くなっている

特にサルトストラウメンは、世界で最も強い海流だ

一つ間違えば巻き込まれて遠く離れた海まで流されてしまう

一方で、渦潮は水中の生態系に大きな影響を与える
サルトストラウメンは、そのバラエティ豊かな生態系が育む自然でも有名だ

世界最強のうず潮にカヌーで挑む

強い潮の流れの中をエンジンなしのボートで渡り切ると聞くと、とても危険な行為に見えるがそれを求めてしまうのも人間の性である

Red Bullの提供するムービーでサルトストラウメンに挑む二人組の男達の話を見ることができる
世界で最も危険なうず潮にボートで挑む

ホフとボルシュという二人組がカヌーでサルトストラウメンを渦潮の間を渡り切る姿を、サルトストラウメンの渦潮で祖母を亡くした男性が見守るというストーリー

3分程度で見終われる長さもちょうど良く、二人の心拍数を知ることで如何に厳しい挑戦であったのか、スリリングに楽しむことができる

海を愛する人々にとっての黄金郷、サルトストラウメンの海

強い潮の流れに乗って集まってくるプランクトンを求め様々な種類の魚達が集まってくるサルトストラウメンの海

日本で言うところの鱈(タラ)はもちろんのこと、アンコウ、ナマズ、魚好きでもないとあまり馴染みはないかも知れないが、スケトウダラ、オヒョウなども生息する

北ヨーロッパ最大の猛禽類である、尾の白いウミワシ
その羽は2.4mも広がる程大きな鳥だ

サルトストラウメンは、魚を餌とするこの大きなウミワシの世界最大の群れがあることでも知られており、サルトストラウメンを中心に自然が発展していることが窺える

そんな自然の豊かな場所を人間が見逃すはずもなく、古くは石器時代より人間もこの地に身を寄せていた形跡がある

1100年前には人間がこの地に集落を作っていたのではないかという痕跡が見つかっている

渦潮を間近で体感!!ボードーからのボートツアー

自然を見に行く場合、移動手段についても不安があるだろう
そんな問題を解消し、さらに渦潮を間近で見ることのできるボートツアーはいかがだろうか

ウミワシのサファリと渦潮のリブボートツアー

ボードー市内の図書館のすぐそばから、リブボートツアーが出ている

渦潮を間近で見られることはもちろん、ウミワシを見るためのツアーでもあるので、Straumøya(ストラム島)の裏へ回るためより狭い海のツアーを楽しむことができる

何箇所か停まってガイドしてくれるので、よりサルトストラウメンのことを知ることができるだろう

冬の間も運行しており、夏と同じくらい楽しめるツアーとなっているとのことなので、季節を外して観光にくる方でも体験可能だ

ウミワシのサファリと渦潮を体感するリブボートツアー

サルトストラウメンのガイド、リブボートツアー

もう一つ別の会社でもリブボートツアーを運行している
こちらは、ボードー駅近くの港から船が出ている

同じく渦潮を見に行くツアーだが、ウミワシにはフォーカスしていない
また、冬は運行していないようなので、注意が必要だ

その分若干安くボートツアーが体験できるので、費用を抑えたい方は、こちらをチェックしてみるのもいいだろう

サルトストラウメンリブボートツアー

釣りの聖地、サルトストラウメン

渦潮の起こるタイミングは、釣り人達にとっても絶好のチャンスであるようで、実際に渦潮の時間には釣竿を持った釣り人達が多くみられる

それもそのはず、釣竿で釣られた世界最大のスケトウダラは、サルトストラウメンで釣られたのだ

サルトストラウメンには、フィッシングキャンプがあるので、釣り好きはこちらに宿泊するのも面白いかも知れない

釣り道具などは持っていかなくても、追加料金を払うことで貸し出してもらうこともできるので、身軽に旅行ができるのもメリットだ

Saltstraumen Brygge(フィッシングキャンプ)

サルトストラウメンを海の中から楽しむ

釣り以外にも豊富な海洋生物たちを楽しめるのが、ダイビングとシュノーケリングだ

ダイビングなら、潮の強い時間でも挑戦が可能で、シュノーケリングは初心者でも安心の強い潮から離れた岸に近いところで楽しむことができるサービスをNord&NEが提供している

踊る海藻と魚達とダイビング

ダイビングの場合、強い潮の流れを体験するなら、新月もしくは満月を、水中での写真撮影を楽しむなら半月の時が良いとされている

潮が強い時には、海藻の森が波に揺られ踊っている姿が楽しめるとのこと

強い潮の流れの中でダイビングに挑戦したい場合は、ドライスーツでのダイブの認定を受けており、かつ、ドライスーツでの経験が豊富である必要がある

また、AOW (より難しいライセンス)ライセンスを持っていることが望ましい

シュノーケリングで見るサルトストラウメンの海の中

シュノーケリングを楽しみたい場合は、強い潮の流れから離れた岸に近いところをボートで案内してくれる

必要な装備も込みで、事前の説明で安全に楽しむ方法や、サルトストラウメンの海の生物に関する知識まで紹介してくれる

シュノーケリング中もガイドが付き、いつでも上がれるようにボートもそばに待機してくれるので、泳げる必要はあるが、初めてでも安心だ

用意されている装備が大人のXXSからとのことなので、12歳以上がおすすめとされている

大人も2名以上人が集まらないとツアーとして成立しないようなので、一人旅の方は中が必要だ

オオカミウオを守る取り組み

サルトストラウメンにはオオカミウオという魚が生息している

オオカミウオなんて筆者は初めて聞いたが、Nord&NEのサイト内の写真を見ると、少しグロテスクなところが妙に惹かれてしまう

オオカミウオという名前の通り、噛み付く力がかなり強い
魚なのに歯があるのもまた面白い
もしダイビングの際に見かけたらつついたりせずに、少し離れて観察する方が良いだろう

そんな強いオオカミウオだが、ダイバーの中にはオオカミウオを狩るのを楽しむ人がいるようだ

Nord&NEでは、サルトストラウメンの生態系を守るため、オオカミウオの狩りは禁止としている

ノルウェーの守るべき海
サルトストラウメン

世界で最も早く、最も強い渦潮

ノルウェー国内では、2013年に保護されるべき海の一つとしてサルトストラウメンの周囲の海域が認められた

何も知らずに訪れてももちろん楽しいが、その背景を知るともっと旅が楽しくなるはずだ

ノルウェーの北を訪れる際は、恐ろしく、美しい海を旅の行き先の一つにしたい

最も渦潮が強くなる時間

渦潮は新月と満月の頃に一番強くなるとされているが、1日の中でも強さが違う

およそ6時間毎に引き潮と満ち潮が起こるが、季節によっても変わるので、サルトストラウメンを訪れる際は、時刻表を確認しておくのがおすすめだ

サルトストラウメン潮の満ち潮引き潮の時刻表

サルトストラウメンへの行き方

サルトストラウメンはボードー市内からもかなり離れており、バスで行く場合にはそれなりに時間がかかるのと、事前にある程度情報収集をして必要があることを考慮し、旅の計画を立てていただくのが良いだろう

また、電車は通っていないので、ご注意いただきたい

サルトストラウメンへ車旅

サルトストラウメンは車だとボードーから約30分程度
空港付近で借りてしまうというのも手かも知れない

ボードーのレンタカーを調べる
ネットで調べれば、もっと安いところもあるかも知れない

サルトストラウメンバスの旅

サルトストラウメンへのバス旅は、なかなか時間の制限がかかるので、事前によく調べてから出発することをおすすめする
周囲のミュージアムなども見て帰ったりすることを考えると、一日かかる可能性も考慮して、ゆったりめの計画を立てるといいだろう

乗り換えなしで行く場合、200番か300番のバスに乗車し、およそ40分の旅だ

潮の強い時間に到着したいことを考えると、朝イチの渦潮を見るならば、7時前に出発して、現地で何時間か待つ場合もある

さらに帰りのバスと考えるとお昼過ぎの渦潮を見に行く方が交通の便はいいかも知れない

ボードーからサルトストラウメンのバスを調べる

車がないなら、ボートツアーがおすすめ

レンタカーが使えないが、バスは時間がかかりすぎる…
という場合は、前述したボードーから出発するボートツアーがおすすめだ

ウミワシのサファリと渦潮を体感するリブボートツアー
サルトストラウメンリブボートツアー

どちらもボードー市内から出発してくれるので、交通機関の心配をする必要がないのが嬉しいポイントだ
各ボートツアーは出発地点が違うので注意が必要だ

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